研究の概要

レオロジーとは、物質の変形と力の関係を調べる学問です。 当研究室では、物質のレオロジー的挙動の分子的起源について調べています。例えば、高分子物質は、温度・時間に応じて、ガラス状、ゴム状、粘性流体の挙動を示します。 こうした性質は、高分子が材料としての優れた応用性、加工性を付与するもととなっています。これらの性質は、分子運動と密接に関連していて、分子構造と分子運動との関係、 分子運動とレオロジー挙動の関係を明らかにすることによって、新しい材料の開発のための 指針を提供することができます。

当研究室では、レオロジーの手法に、誘電分散、複屈折測定等の方法を加え、レオロジー現象を分子のレベルから解明することを目的として、研究を行っています。

高分子系の分子レオロジー

プラスチックは、溶融高分子を流動させて成形加工します。この時の流動性は、互いに深く貫入した高分子鎖の運動を反映し、鎖の分岐に強く影響されます。この鎖の運動の詳細をレオロジー測定、誘電測定、複屈折測定などで調べた結果、分岐鎖の運動が現在の分子理論とは異なることなどが明かになってきています。また、改良理論の構築も進んでいます。

複雑液体のレオロジー

インクや塗料などは、固体の微粒子を水などの揮発性液体に分散した不均質系です。実用上、このような分散系の高速流動性が不可欠ですが、多くの場合、高速流動下では粘性が上昇してしまいます。この粘性上昇の原因を調べるためにレオロジー測定、中性子散乱測定などを行った結果、粒子のブラウン運動に打ち勝つほど速い流れの下では粒子が動的凝集体を形成して粘性上昇が生じること、粒子の表面修飾で、この動的凝集体形成が抑えられることなどが明らかになってきています。